夏だけじゃない、「冬のかくれ脱水症」にご注意を!

■気づかないうちに水分不足になってしまう「冬のかくれ脱水」

脱水というと、夏のイメージが強いですよね。しかし冬でも、日常生活の中で脱水症を起こしてしまう可能性があります。

冬の日常生活において脱水が生じる原因を、体の周りの環境(外的環境)と体の内側の環境(内的環境)に分けて見ていきましょう。

(図はお借りしました:冬場の脱水症の外的・内的要因)

 

■冬にみられる脱水の要因

外的環境としては、まず空気の乾燥があげられます。

また、現代の住宅は気密性が高く、エアコンなどの暖房器具の使用により、さらに室内の湿度が下がります。かつての日本家屋では、ふすまや畳が湿度をコントロールする役割も果たしていましたが、それらが使われていない住宅では、より乾燥します。

乾燥した環境では、皮膚や粘膜、呼気から、特に自覚がないまま水分が失われる「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」(*1)が増えます。

つまり冬は、日常的に生活する中で、知らず知らずのうちに体から失われる水分の量が増えるのです。

 

一方、内的環境はどうでしょうか。

冬は体感温度が低く、喉の渇きを感じにくくなっているため、夏場に比べ飲料の摂取量が減りがちです。体を冷やしたくないなどの理由で飲料の摂取を控える場合もありますし、運動時においても、冬は水分摂取が不足しやすいと言われています。

このように、外気の乾燥による不感蒸泄の増加と、水分摂取量の減少が同時に起こりうる冬は、日常的に脱水のリスクと隣り合わせなのです。

 

また、冬に流行するさまざまな感染症も、脱水症を発症する原因のひとつです。ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎を発症すると、激しい嘔吐や下痢などを繰り返します。

通常、小児で約70%、成人で約60%、高齢者で約50%を占める体液が、嘔吐や下痢によって大量に体外に放出されてしまうため、脱水症に陥るリスクが高まります。

そのほか、インフルエンザなどを発症して高熱が出た場合も、体温調節のために発汗することから体液を失いがちです。

このように、日常的な脱水のリスクに加え、ウイルス感染による嘔吐や下痢、発熱によって生じうる脱水症のリスクには、特に注意が必要となります。

*1不感蒸泄……普段感じることのない水分の喪失。呼気に含まれる水分や皮膚や粘膜から蒸発する水分を合わせたもの。

 

■状況に応じて、適した飲料を補給しよう

冬のかくれ脱水症を防ぐためには、なによりも、まずは水分補給を怠らないことが大切です。

暖房の効いた部屋で長時間過ごすときは、喉の渇きを感じる前に、こまめに水分を取りましょう。

日常の脱水予防には、温かい白湯やほうじ茶など、体を温めつつ水分を補える飲料を飲むだけで十分です。

しかし、高熱で大量の汗をかいたときや、感染症にかかって嘔吐や下痢の症状があるときは、水分と共にナトリウムやカリウム、ミネラルなどの電解質も失ってしまうため、水を大量に飲むだけでは適切な水分補給はできません。

水だけを大量に飲んだ場合、一時的には体液量が増えます。しかし、体液に含まれる電解質の濃度が下がり、体液濃度を一定に保とうとする体の働きによって水分が排出されてしまうため、脱水状態から回復できなくなってしまうのです。ですから、電解質を含む飲料で水分補給をすることが重要です。

(図はお借りしました:水だけを飲んだ場合と適切な水分補給をした場合の体液の変化)

 

大量に汗をかいた場合には、塩分濃度が0.1~0.2%の飲料の摂取が推奨されています。また、適度な糖分を含む飲料は、血中の水分保持率を高めるという報告もあります。

スポーツドリンクは前述の範囲の塩分を含み、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなど汗で失われた成分に加え、適度な糖分も含んでいるので、脱水症予防に有効です。

 

しかし、実際に脱水症に陥ってしまった場合は、水分吸収速度が速い経口補水液を摂取しましょう。経口補水液はスポーツドリンクと同様、電解質と糖分を含んでいますが、スポーツドリンクに比べナトリウム量が多く糖分が少ないため、迅速に水分を補給できるのが特徴です。(図はお借りしました:スポーツドリンクおよび経口補水液の成分とその働き)

経口補水液は、大量を一気に摂取するのではなく、少量ずつゆっくりと飲むのがポイントです。特に吐き気があるときは、まずは少量を試し、摂れるようであれば回数を増やして失った分を補給していくことが大切です。また、体を冷やしたくない場合には少し温めて摂取します。

 

■子供とお年寄りは特に注意を!

脱水症に関して特に注意が必要なのが、子供とお年寄りです。

子供は、水分や電解質の再吸収が行われる腎機能が未発達で、大人に比べて比表面積も多く、汗も多くかく事から、水分の出入りが多く、脱水症になりやすいという特徴があります。また、自分の意思で水分補給ができない乳幼児には、周囲の大人が気を配る必要があります。

子供が嘔吐や下痢をしているときは、発症後3~4時間で50~100mL程度の経口補水液を少量ずつ与えます。そして、嘔吐または下痢による排泄の都度、失った水分量を確認しながら、1時間あたり体重に応じて60~240mL程度を3~5分おきに少量ずつ補給します。

一方、お年寄りは喉の渇きを自覚しにくかったり、普段の食事量が不足しがちな傾向が強く、日頃から脱水症になりやすい状態といえます。脱水により持病が悪化することもあるため、嘔吐や下痢の症状が出始めたら、速やかに経口補水液を摂ることが大切です。

最初は1~5分おきに摂取し、嘔吐が止まれば適量を補給していきます。お年寄りは嚥下機能が低下している場合もあるため、ゼリータイプの経口補水液もおすすめです。

以上のように、脱水の「予防」と「改善」では、摂取すべき飲料の種類が異なります。最低限、以下の事を覚えておくと良いですね。

■冬場は、かくれ脱水になりやすい。(だから予防しよう)

■子供とお年寄りは、大人よりも注意が必要。

■脱水症の予防には、白湯やほうじ茶。

■脱水症になった時は、スポーツドリンクや経口補水液。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございます。この記事が、あなたが毎日を楽しく過ごすためのヒントになれば幸いです。

**参考文献**
Sawka MN, et al. Med Sci Sports Exerc 39: 377-390, 2007.
環境省、熱中症環境保健マニュアル2014.
全国清涼飲料工業会、「熱中症対策」表示ガイドライン, 2012.
一般社団法人日本老年医学会. 在宅医療に関するエビデンス: 系統的レビュー

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